この旅行記は、現地情報を調べた上でのフィクションです。
情報は2024年10月現在のものですので、向かわれる際は個人での情報確認をお願いいたします。
銀山温泉。
「温泉好き」「旅好き」でその名を知らぬ人はいない名所だろう。
まだ日差しの色が薄い早朝、大石田駅から銀山温泉への旅はスタートした。
駅から銀山温泉行きの市営バスに乗り、約40分。
屋根に薄っすら降り積もっていた程度の雪が、バスに揺られるほど徐々に分厚くなっていく。
山から抜けると、バスは突如「銀世界」に包まれた。畑一面がしっかりと雪に覆われているのだ。
またしばらくすると、背丈を超すほどの「雪の壁」が突如あちらこちらの一般住宅で見られるようになる。
その迫力に圧倒され始めたころ、やっと私は目的地「銀山温泉」へと到着した。
銀山温泉に到着し、最初に目に飛び込んできたのは、あの美しい街並みだった。
大正時代の面影を色濃く残す木造3、4階建ての旅館たち。
そんなずっしり重厚感のある建物に、銀色の雪がどっしりと積もっている。
参照: 銀山温泉 公式サイト | 四季 (ginzanonsen.jp)
雪化粧をした街並み。そこかしこから舞い上がる温泉の湯煙と香り。
まるで時間が止まったかのような美しさに、思わずシャッターを切った。
温泉街をぶらぶらと歩いていると、そこかしこから醤油や出汁の良い香りが漂ってくる。
芋煮や玉こんにゃく、だしの効いたそば料理など。
想定以上の寒さだったこともあり、私は玉こんにゃくを購入する。
丁度、銀山川のほとりに足湯があるのを発見した。
足湯に入った途端、ジンっと足が一気に温められる。どうやら想像以上に体が冷えていたらしい。
雪解け水で路面はあちらこちらが濡れている。そのため、自分のスニーカーも靴下までびっしょりと濡れていたのだ。
次回は長靴を履いてこよう…。
銀山川の流れる音を聞きながら、鰹出汁の効いた、熱々もっちりの玉こんにゃくに舌鼓を打った。
ゆっくりと足湯に使った後は、本日の宿へと向かった。
参照: 銀山温泉 公式サイト | 仙峡の宿 銀山荘 (ginzanonsen.jp)
「銀山荘」
温泉街から少し離れた静かな場所にある、銀山温泉を代表する旅館だ。
旅館について一発目はやはり温泉につかること。
つい「ああーー」と声が出てしまうほど、とにかく体に染み渡る。
公式HP参照: 温泉 | 銀山温泉 仙峡の宿 銀山荘【公式ホームページ】 (ginzanso.jp)
氷点下の街。
寒さ対策はしっかりしていったが、それでも外を歩くときは身が引き締まる思いだった。
しかし、寒い外と温かい温泉のコントラストを楽しむのも、冬の温泉の醍醐味だろう。
外の寒さを感じた後に温泉に浸かると、その気持ちよさは格別だった。
そういえば、滞在中に地元の方から興味深い話を聞いた。
銀山温泉は、元々江戸時代に銀鉱山として栄えた地域だったそうだ。その名残で「銀山」温泉という名前がついているのだという。
時代と共に鉱山は衰退し、この地域は温泉地として生まれ変わったそうだ。
大正時代に建てられた旅館が今も残っているのは、その名残なのだとか。
歴史を感じながら温泉に浸かる経験は、何とも言えないロマンと趣があった。
部屋に戻るとあっという間に夕食の時間。
海鮮陶板焼きに、脂の乗ったマグロ、地元産の米に、季節ごとの旬の食材を使った料理。
温かい料理を女将さんが一品ずつ説明してくれる。
「それから、こちらは山形の地酒です。是非、お料理と地酒とのペアリングをお楽しみください」
ただ美味しいだけでなく、地元文化や季節感を感じられるのは、やはり旅行の醍醐味だ。
丁寧に作られた温かく、美しい料理を、一つ一つしっかりと味わう。
尾花沢牛のステーキは、とろけるような食感と濃厚な旨味で、今でも忘れられない味である。
旅館は全館車椅子で移動可能で、多目的トイレやエレベーター、スロープなどが設置されていた。
客室内にも手すり付きの洋式トイレがあり、大浴場の浴槽にも手すりがついている。
旅館はどうしても古い建物が多く、特に温泉地ではバリアフリーに対応していないことも少なくない。
だからこそ銀山荘の施設は、「高齢者や障害のある方に関わらず、より多くの人に旅行を楽しんでもらいたい」という旅館の思いが感じられた。
夕食を食べ終わったあとは、少しだけ散歩に出かけることにした。
なんといっても、銀山温泉が最も美しい瞬間は冬の夜だと思う。
銀山温泉の景色は、時間帯によって驚くほど変化するのだ。
参照: 銀山温泉 公式サイト | 四季 (ginzanonsen.jp)
まさしく、「幻想的」
雪に包まれた大正ロマンの街並み、温泉の湯煙、雪の日特有の静けさ。
旅館の窓明かりが雪に反射して、幻想的な光景を作り出す。
夜の銀山はまるで絵葉書から飛び出してきたような、静かで、冷たい。そしてどこか懐かしい空気をまとう。
この美しさは、写真では伝えきれない。
私は、その美しさを心ゆくまで、決して忘れることのないよう、焼き付け続けた。
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