この旅行記は、現地情報を調べた上でのフィクションです。
情報は2024年10月現在のものですので、向かわれる際は個人での情報確認をお願いいたします。
大阪の心臓部・道頓堀で味わう究極の食い倒れ探訪
いつからだろう。
人間の生きる気力を感じられる場所が減ってきたと思う。
それなのに、夕暮れ時の道頓堀に降り立つと、圧倒的な活気に呑み込まれる気がした。
街のいたるところには派手なネオンサインが輝き、通りには世界中から集まった観光客の波が押し寄せている。
大阪メトロ御堂筋線・なんば駅から歩くこと5分。
この短い距離で、すでに様々な料理の香りに包まれていた。
なるほど、これが「大阪の心臓部」か。
行きかう楽し気な人々を眺めながら、街をぶらつく。
「道頓堀」といえば、まず思い浮かぶ「グリコの電光看板」
出展: 道頓堀 | 観光スポット・体験 | OSAKA-INFO
さわやか笑顔の青年は、なんと1935年から道頓堀の空を彩っているらしい。
今夜も鮮やかな光を放っている。
戎橋の上では、観光客たちがスマートフォンを掲げ、Yのポーズで写真を撮影している。冷静に見てみるとなんだか面白い。
少し歩くと、大きな「かに道楽」の巨大カニが出迎えてくれる。
出展: 道頓堀本店 | 店舗詳細 | かに道楽 | かに道楽グループのホームページ。全国にあるかに道楽グループの店舗情報や詳しいメニュー紹介を掲載。 (douraku.co.jp)
鋏を動かす様子が、先ほどのY字ポーズの人々に見えて、ついニヤリとした。
今日はまだ夕飯を食べていない。
「たこ焼き 食べ比べ」
安直かもしれないが、私にはこの盛大な目的があって、はるばる道頓堀までやってきたのだ。
空腹を誘う香りに導かれるように、まずは道頓堀を代表する人気店「本家大たこ」に足を運んだ。
出展: 本家大たこ 道頓堀本店 | ええやん!大阪商店街 特設サイト|大阪府商店街魅力発見サイト (osaka-shotengai-info.com)
道頓堀で最も歴史ある昭和47年創業のこの老舗。
しっとりぷるぷるの食感が特徴的なたこ焼きで知られている。
注文してから焼き上がるまでの間、職人の手さばきを眺めるのも楽しみの一つだ。
クルクルと回す姿をつい子供のように、際限なく眺めてしまう。
熱々のたこ焼きは、とろけるような生地の調和が絶妙。
タコも大ぶりで、噛むとジワリと旨味を感じることができる。
そうか、これが本物のたこ焼きか。
ああぁーービール飲みてぇー。思わず唸ってしまった。
店を出ると行列が。観光ならば、これは予約必須だな。
さすが本場大阪、美味しかった。そんなことを考えながら再び街をぶらぶらする。
出張らしきサラリーマンの群れ、いちゃつくカップル。
世の中にはいろんな人間がいるんだなぁ。そんな当たり前を再認識する。
しばらく歩くと、「体験型 コナモンテーマパーク」という何となく大阪のネーミングセンスを感じる建物を見つけた。
ここはガイドブックで見た気がする。そんなことを考えながら建物に入ってみる。
施設には、「たこ焼き食品サンプルづくり体験」などもあり、大人ながらかなりそそられる。
それをそっと見ないふりをして、「たこ家道頓堀くくる匠」のコナモンミュージアム店に入店。
2件目だ。期待値は上がっているぞ。
ここでは、店内でたこ焼きの焼き方をプロに教えてもらうことができる。
まさに「体験型 コナモンテーマパーク」。
つい先ほど見ていた「本家大たこ」でのクルクルを、自分で再現できるのだ。
油をひき、言われるがままクルクルする。
作ったタコ焼きは、もちっとした生地。そして、その中がとろっとろに仕上がっている。
さすがプロ。さすがコナモンテーマパーク。
「たこ焼きなんて誰が焼いても基本同じ」そう思っていた自分が恥ずかしくなった。
喧騒から離れて一本路地に入ると、急に空気が変わる気がする。
こじんまりとした木づくりの門には「法善寺横丁」と書かれている。
出展: 法善寺横丁 | 観光スポット・体験 | OSAKA-INFO
石畳の道と苔むした不動明王の像は、にぎやかな表通りとは打って変わって静寂な空間。
江戸時代からの風情を残すこの場所は、さほど離れていないのに、道頓堀の持つ多面性を感じさせる。
「神戸牛」「はもしゃぶ」などと書かれたオレンジ色の提灯に囲まれながら、ふらふら歩く。
…今度はお腹を空かせてこよう。
夜が更けるにつれ、道頓堀の表情は徐々に変化していく。
さて、そろそろ帰るか。本当はもう1件たこ焼き屋を回りたかったが、満腹すぎる。
道頓堀川まで戻ると、再び人々のガヤガヤとした活気を感じる。たまにはこういうのも悪くないな。
ふと川面を見ると、観光客らしき人々をのせた船がゆっくり上っていく。
「とんぼりリバークルーズ」というらしい。
出展: (乗合)とんぼりリバークルーズ | BOAT | 大阪観光クルーズ、遊覧船 | オンライン予約サービス (boat-osaka.com)
約20分間のクルーズ。川面から道頓堀の街並みを眺められる贅沢な時間だ。
ガイドから聞く歴史秘話も興味深く、新しい視点で道頓堀の魅力を再発見できる。
それから、船から見るグリコ青年、青い某ペンギンの看板も、意外と迫力があって面白いのかもしれない。
1612年、自らの私財をなげうって川を開削した安井道頓(やすい・どうとん)の名前に由来して、道頓堀と名付けられたらしい。
その後、芝居や歌舞伎の娯楽の街として栄えて、今の食の街になったのだとか。
そしてこれに飛び込むのか…。それは病気になるわなぁ。
駅までの帰り。
居酒屋からは笑い声が漏れ、串カツ屋では揚げ物の香ばしい香りが漂う。
お好み焼き屋の鉄板からは湯気が立ち上る。
カウンター越しに会話を楽しむ地元の常連客の笑い声があちらこちらから聞こえる。
なるほど、これが生きる活気か。
こんな常連になれる店が自分も欲しいな。
そんなことを考えながら、コンビニすらない田舎へボチボチ帰っていくのであった。
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